2018/11/16

大阪 その境界線で

毎夕行く店に、建築家、隈研吾の『僕の場所』という本があったので、読んでみた。
その中に「境界人」について触れられている箇所がある。

隈研吾は大学入学直後、折原浩氏にマックス・ウェーバーの「境界人」という概念について教わる。
それによると、
ー誰でも境界人になれるわけではない。境界を境界であると認識するためには両側を移動しなくてはならない。
言いかえればどんな場所も何らかの意味で境界であるー
マックス・ウェーバーは都会と田舎を例にしているようだが、
大阪の西成区は、まさに境界線が
はっきりと存在している、そんな場所だ。

大阪の地形は南北に高台が短冊状に広がり、大阪城はその高台の縁に、見渡すように建てられている。そして高台の南側には昔ながらの寺町がひしめいている。
一方、短冊の西側は谷になっている。(かつては海だった)
地下鉄「谷町線」は、大阪城の西側の麓を南北に走る線だ。
大阪の人にとっては生まれたときから当たり前のようにある坂や谷なのだろうが、わたしから見ると
その高低差を利用して街ができていることが実感できる。
特に顕著なのが、阿倍野区と西成区の境だ。
*あべのハルカスという2014年に完成した日本でもっとも高いビルディングが、阿倍野区の天王寺駅前にある。

一方、飛田新地(飛田遊郭)は、あべのハルカスと1キロと離れていない距離にある。
飛田新地と境界が混ざるようにして、釜ケ崎と呼ばれる日雇い労働者の集まる街があり、わたしはそこにある宿で寝泊まりしている。
(釜ケ崎は、現在では安宿を目当てに海外からの旅行客が多い)

飛田新地のある西成区と、あべのハルカスのある阿倍野区の境界線は見事である。
あべのハルカスから坂を下っていくと、高層マンションが立ち並び、大学病院もあるのだが、急激に落ちるようになっている地形に出会う。
そこから向こうは飛田新地である。黒いくすんだ屋根瓦の木造長屋の2階が、足元より低い位置に広がっている。
そして、そこには越えてはいけないと思わせる心理的な線がはっきりと存在する。
阿倍野区に住む子供は、あの階段を絶対に下りてはいけないと幼い頃から教えられると書かれたものを読んだ。

だいぶ大阪の街に慣れてきたわたしでも、
この街のコントラストは「すごいな。。。」と歩く度に思う。

そして毎日のように境界を越えて行ったり来たりしている。

*あべのハルカス
あべのハルカスは、阿倍野区に建ち、
「晴るかす」ー心を晴れ晴れとさせる、という意味で命名された。