2014/06/30

池澤夏樹『スティル・ライフ』

朗読会にて

 

 岡安圭子さんは、池澤夏樹著『スティル・ライフ』をこの日の朗読の会のために選んでいた。

 池澤夏樹氏についてと、岡安さんにとっての氏の小説について
簡単にふれたのち『スティル・ライフの』朗読が始まった。
 
 初夏の東京日本橋、オフィス街の土曜の夜は人気がなく、古いビルの5階の白い部屋は、雑音がほとんどしない。

 主人公の、坦々とした日々を描いたストーリーの中に、
時折するどい、しかしとてもやさしい物言いで
人々へのメッセージともいえる言葉がちりばめられている。

 「世界と自分との間に橋を架け、それを関係させることが大切なんだ。」という意味の一文がとても心に残った。

 「自分のやりたいことを社会の中でをどう折り合いをつけていくかが大切なんだ・・・」という解釈は正しいかわからない。
 しかし私はそう受け取った。

 そして「ああ、この人がずっと自身に問いかけてきたことなんだろうな・・・」と感じた。
 池澤さんがこれまでしてきた多くの旅や、住んだ土地土地で
このことをずっと考えてきたのだろうな・・・と。

 それくらい自然で、普遍的で、氏自身に言っているようでもあり、すべての人に言っているようにもとれる言葉だった。

 池澤氏の言葉は、岡安さんの声と共に、すっと私の中に入ってきて留まった。


        岡安圭子さんホームページ             www.okayasukeiko.com




                                                                                              







2014/06/23

26日の月

          月展

        展示作家有志による有終展
        7/8-7/13  11:00-20:00

銀塩写真専門のギャラリーバー「26日の月」が惜しまれつつ、7月31日で閉店する。

明日香さんがお店をオープンさせたのが2001年9月1日。
「写真とお酒とJazzが好きで始めた」と語った明日香さんは写真家でもある。

オープンしたてのころ、私の作品「ラフレシアを探して」で
ポートレート写真の撮影とインタビューの取材をさせて頂いた。

あれから約13年・・・。
「26日の月」で何度仲間と写真談義をしたか数えきれない。

明日香さんへのオマージュを込め、13年前のポートレートを1点出品します。




2014/06/02

中国の旅を終えて

 中国の旅を終えて

「大都市と地方(田舎)」をテーマにした2回目*の取材。
中国では、上海と紹興で撮影することに決めた。
取材都市をこの2都市に絞る前に、私は北京往復の航空券を取ってしまっていた。
そのため北京上海紹興の往復という長旅を経験することになる。
しかし、この一見無駄ともいえる上海―北京間往復の長旅が、気持ちの切り替えになり、中国を理解する上で多くの気付きを与えてくれたことは、後に感じたことだ。
上海と紹興だけにとどまらず、北京そして鉄道の中から見る様々な都市や田園の風景は、私の中国への想像力を大いに膨らませてくれた。
*1回目は2013年末、フランスのパリとヴィトレでの取材です。
[上海]
上海は中国最大の都市と言われる。
首都でこそないが、その歴史の類まれでドラマチックな変遷と、ダイナミックな都市の構造は、上海の最大の魅力といっても良いだろう。
上海は時代と空間が立体的に交錯した都市だと思う。
そこには多くの国の文化が入り込んでいた歴史と、垢抜けした部分、昔ながらの庶民の暮らしが、明るさ、にぎやかさを伴って共存していた。
 都市の良さとは、人間の様々な状況や状態に対応する器があることだと、私は思っている。そういった意味でも、上海にはそれがあった。
「都市の空気は人を自由にさせる・・・」というイーフートゥアン氏の著書『トポフィリア』の一節があるが、その表現がぴったりな都市といえるのではなかろうか。
そういえば、氏も中国系アメリカ人だった事を思い出す。

  
[紹興]
紹興は江南地方の小さな都市で、水路が市の縦横に走っているのが最大の特徴だ。
ここでは水路と共に生きている人々の昔ながらの暮らしを間近に見ることができた。
市街地では都市生活の部分ももちろんあるが、それは一部にすぎない。
紹興を舞台にした魯迅の短編小説『明日』にも描かれているように、隣近所や1つの集落が親せき同士の様に近い関係が、いまだに残っていると感じた。
どこの家の誰がどうしている、といったことが隣近所に把握されているというのは、個人主義の生活スタイルに慣れてしまった都市生活者からすると、驚くべきことだ。

紹興では水路のごとく、ゆったりとした時間が流れていた。


   

2014/06/01

中国への旅

30May 2014 北京 そして日本へ
約3週間ぶりの北京。
この広大な国の首都としての重みが
北京にはあると、改めて思った。

北京、上海、紹興そしてまた上海、北京と戻ってきた。
3都とも都市の性質がまったく違う。
異なるのだが、朝の行商や露店で売られているもの
食べる物、人の暮らしなど、そう違いがないようにも感じる。

その点をこれから考察する必要があると思う。
今後の課題ができた。