2016/03/26

函館・十勝への旅

(十勝 4)

私は美しくないものを美しく撮ることは得意だが
美しいものを美しく撮ることは苦手だ・・・(と自分では思っている)

私の撮りたいことの本質はそこではないのだ。

十勝ではその風景の姿が美しすぎて「手も足も出ない」と思う事は何度もあった。

しかし、やがてそれも考え過ぎなのかな・・・と思う。
第一「美しさ」という言葉の定義も人によって違うはずだ。

久しぶりに十勝の皆さんと時を一緒に過ごしているうちに
ここ最近突き詰めて考えていた写真のことからふっと解放され
気持ちが軽くなる。


十勝の自然と、親切にして下さったみなさんに心から感謝します。





函館・十勝への旅

(十勝 3)

ジャズナイトの余韻を引きずったまま
翌日は撮影ツアーへ。

人生初スノーシューを履いて森の中を縫うようにして進み
歩きながら樹について、森の話など地元の方にしていただく。

木々の間からの木漏れ日が雪上に陰を作り
まるで森全体が踊っているみたいだ。





函館・十勝への旅

(十勝 2)

帯広に着くとプレミアム・ジャズ・ナイト

毎冬、石井彰さんをお招きして
ジャズライヴを開催している。
今年はその4回目。

石井さんの弾くピアノは、構築的で洗練された形式。
そこに空気や風を吹き込んでいくような繊細な演奏だ。
音の間、余白・・・そして石井さんとピアノの距離感が絶妙だと
聴くたびに思う。

石井さんとセッションするのはギタリストの小沼ようすけさん。
情熱的で時に優しく、何かを語りかけてくるような
重厚なギターの音は
思わず身体がふわっと浮き上がるような感覚になる。





2016/03/25

函館・十勝への旅

(十勝 1)

函館を後に十勝へ向かう。
汽車で約6時間、距離はおよそ440キロ。

内浦湾沿いに長万部を過ぎ、室蘭、苫小牧と順に停車していく。
ひとつひとつの駅に下車したい衝動にかられるがガマン。

しかしかなりの距離を移動しているにも関わらず
不安や圧迫感をまるで感じない。
これは車で移動するときも同じ事が言えるのだが
道内で長い距離を移動しても、変な疲れを感じないのは不思議な事だ。

南千歳の乗り継ぎで外気に触れたとき
函館では感じたことのない寒さが足もとからぐっと伝わってきた。



   






















函館・十勝への旅

(函館 5)

函館山の山裾の海岸線を歩く。東から南、北から西へ。
海沿いは漁港が続き、漁業を生業とする人々の家々や
納屋が軒を連ねている。

途中、猛烈に吹雪いてきた。
しかし一時間も経てば天候はやがて変わる。
函館の天気は変わりやすい・・・ということが3日の滞在で
身に染みた。
海が近く山が接近しているためか気圧の変化が起こりやすいのだと思う。

気象状況と同様に
出ていくものと入ってくるもの、変わるものと変わらないもの。
様々な文化や変化を受け入れながら
これまで200年余りをやってきたのだな・・・と思う。

函館の都市としての強靭さ、タフさのようなものをふと感じる。






2016/03/24

函館・十勝への旅

(函館 4)

函館郊外にあるこの場所はまだ雪深い。

山道を登り始めて10分あまりだろうか、視界が急に開けてきた。
どうやら私は脇道から来てしまったらしい。

海から一直線に山の修道院へ続く動線が造られている。
そして、急で長い長い坂道が
修道院の荘厳さと美しさを一層引き立てていた。

神を感じるような場所との出会いだ。

しばしその風景を前に固まって、
ただただその場にいるだけだった。



2016/03/23

函館・十勝への旅

(函館 2)

私が興味を抱いたのは函館の起伏に富んだ地形だった。
津軽海峡に突如として突き出したような函館山は
山裾の東西南北それぞれ目に入ってくる景色が大きく異なる。
海、海峡、湾・・・そして周囲の半島を見渡せる
類まれな恵まれたこの場所は
蝦夷地開拓の歴史舞台に選ばれるのは必然だったのだろう。

ここに立ってみて実感する。




函館・十勝への旅

(函館 1 )
そもそも函館に旅に出ようと思い立ったのは昨年の秋。
東京在住で函館出身の女性の話がきっかけだった。

「蝦夷地の開拓の歴史を辿るように北海道を観た方が良い」
「空路で北海道に降り立つのはもったいない」

2時間ほどの話ですっかりその気になった私は
函館に航路で行こうと決めた。
(実際は時間と経費が大幅に掛かるため東京-青森(新幹線か空路)青森-函館(航路)
ルートは断念した)



果たして函館の街は、複雑に入り組んだ歴史の波を感じさせ
いくつもの文化が厳しい自然の風景と美しく調和する姿を見た。





2016/03/04

パリジェンヌ

昨日は雛祭り。様々な国の女性を取り上げた番組が組まれているのを見て、パリでの日常の一コマを思い出す。

パリの女性は強い、攻撃的、平たく言えば‘恐い’のだ。
毎日通うスーパーの代金を大きいお札で出そうものなら
ため息をつかれ、ゴネられ、こっちの方が気が滅入ってくる。
だからメトロの切符を一枚だけ駅の自動販売機で買ったりして
常に小さい額の札をたくさん準備している。

ある日、毎朝通うパン屋の若い女性(普段は無愛想)が
私が毎回三脚を持っているのを見て「Photographe?」と話しかけてきた。
こちらはびっくりたまげ「Oui」としか言えずそれ以上の会話も
できなかった。
それが残念で仕方なく、私がもし男性だったら会話が弾んで
デートの約束でも取り付けていたかもしれない。
(フランス映画のセオリーに乗っ取るとそんな感じだ)

でも、その朝に限って優しく話しかけられたことは
胸に温かい膜が一枚加わったような気持ちだった。

そうやって私はパリの街に少しづつ溶け込んでいった。