2019/06/28

ネパールへの旅-カトマンドゥ 9-



カトマンドゥー
地形、気候、ひとびとの性質そのすべてが関わってきているのだろう、有機的でゴチャゴチャとした迷宮でありながら、地に吸い込まれるような沈み込んだ静けさと、そしてあるときは、抑えた低音で流れる熱風の音を聞き、感じることができる都市・・・。













2019/06/27

ネパールへの旅ーカトマンドゥ 8ー





ストリートでわたしが撮りたいと思うひとは、その人から発せられる輝くようなものーそれがずっと向こうから歩いて来るときから、感じられるのだ。
人が放つ光、見えないエネルギーとしか言いようがないのだが、それを感じるのは動物としてのわたしの本能からなのか、あるいは魂のことなのか、それはまだわからない。







2019/06/26

ネパールへの旅—カトマンドゥ 7—






カトマンドゥの雑踏の中で、感じたこと。
どの国の都市でも、わたしがストリートを歩いているときに、そこで働き、生きるひとびとの放つ、鋭さのようなものを感じたいと願う。
言い替えれば、わたしはそれを手がかりにして写真を撮っているのだと思う。

ここカトマンドゥのばあい、それが限りなくソフトに近かった。

日本に手紙を書いて投函したが、かなりの確率で届かなかった。人と待ち合わせをしても、遂に現れなかった。
緩すぎる国の仕組みや、人々の時間に対するルーズさは、別の意味ではひとを許すことにも繋がっているのではないだろうか。

これほど写真家冥利に尽きる国はない。









 


























2019/06/23

ネパールへの旅—カトマンドゥ 6—


ネパールのバス料金は日本では考えられない程、安い。
カトマンドゥ郊外から市中心部まで約10キロの道程で25ルピー(25円)だ。
バスというより、大型のバンやミニバスが主流で、人々の通勤通学などには欠かせないのだが、こちらに来てまだ日が浅い人間にとっては、どのバスに乗るのかの判断がかなり難しい。
車掌のような人(たいがい若い男性)が、そのバスの行先を大声で叫びながら近づいてくるので、ネパール語が読めない人でも乗車できるようになっている。
もしくは目的地のバスはどれか、どのあたりにくるのか、その辺の人に聞くという手もある。

ある日の早朝、マッラホテルの前で迎えの車をわたしはずっと待っていた。
車の到着が遅れて、45分ほどその場で待っただろうか、その間行き交うタクシーがわたしに合図してくるのは思えば当然だったが、バイクや車の運転手が、どこ行きのバスに乗りたいのかと聞いてきた。
推測するに、きっとわたしがバスを待っている困っている外国人に見えたのだろう。

ネパールの人はわりと内気で、これ見よがしに助けてくれたりはしないのだが、こうしたじんわりとした親切が嬉しいと感じた。












2019/06/22

ネパールへの旅—カトマンドゥ 5—



カトマンドゥ西方へ、宿からチャトラパティチョーク(チャトラパティ交差点)を北西へ折れると、ぐっと庶民的な空気に変わっていく。
ヴィシュヌマティ川を越えたあたり、その界隈の空気を感じるようにして、わたしはゆっくりと歩いた。

店やタクシーの呼び込みや声掛けがぷつりと途絶え、朝の人々の姿を多く見ることができる。
行商人や小さな修理工場で働くひとびと、店の前にたむろす男性たちや、通学する子供たち。

この辺りは学校がたくさんあるようで、いろいろな制服、年齢もバラバラな子供たちが、早い子だと午前7:00前から、通学のためわらわらと歩いている様子を見ることができる。












2019/06/21

ネパールへの旅—カトマンドゥ 4—


タメルでの日々は、撮影と食事のことを考えれば良いだけの(慣れてしまえば)至ってシンプルな生活だったが、最初はまったくそうはいかなかった。

タメル地区の中の道は、陥没、段差は当たり前で、ぼんやり歩いてはいられない。
車やバイクや人力車はスピードを緩めないし、予想できない凹凸や段差、そして突如現れる水たまりは、都市の中にあってさまざまな障害物を超え、バランスをとって歩かなくてはならない。
トレッキングをしているような、或いはトレイルランの練習のような、そんな不思議な感覚さえ与えてくれた。

東京のように、滑らかに舗装された歩道をぼんやり歩いている毎日からすると、注意と緊張感を途切れさせず、予想以上に骨盤や足を使って歩く街、というのが今とても懐かしく思える。

このように歩いた体験は、恐らくわたしのネパールでの日々の記憶のことと深く関わってきているのだろうと、写真を観ながらそんな風に感じるのだった。



2019/06/20

ネパールへの旅-カトマンドゥ 3-


カトマンドゥのタメル地区(滞在した宿のある場所)は、旅人のためのホテル、飲食店、土産物店、日用品から専門店までありとあらゆる店が揃い、東京で言えば新宿歌舞伎町とアメ横をミックスし、もっとずっと庶民的にして、そこに土埃が舞っている、迷宮・・・といったイメージだろうか。
(ネパールは舗装されていない道路が多く、カトマンドゥでは常に土埃が舞っている)

仕上がったばかりのカトマンドゥのプリントを見ながら、当時の撮影記録ノートを開いてみる。
それによると、2月6日は小川さんにタメル地区を案内していただいたとある。小川さんが「入れ歯通りがあるのよ」と言って、迷宮を分け入って連れて行ってくれたのは、入れ歯専門店ばかり並ぶ界隈だった。
他にも布生地、香辛料といった、専門の小売店がかたまっている。それで自ずと客層も決まってきて、女性しか歩いていない通りなど、エリアごとの特色を感じることができた。
両脇に高く立ち並ぶ建物の二階三階部分の窓や壁などはネパール様式の木彫装飾が施され、実に素晴らしい。
ただ、2015年4月のネパール大地震によって傾いてしまった建物を、つっかえ柱などで何とか支えているという、凝った彫刻を壁面に持つ木造建築を幾つか目にした。

そして、ここをひとりで歩けるようになるのはいったい何日かかるのだろうか?という不安がわたしの頭をよぎった。

それは、初めての土地での初日はいつもそう思うのだが、ここは極めて難易度が高いぞ、というワクワクした気持ちの方が勝った不安ではあったが・・・。









2019/06/19

ネパールへの旅—カトマンドゥ 2―


約四ヶ月前に撮影した写真は、最初からあったのではなく
ここにきてようやく目にすることができた像という感慨がある。

それは、フィルムの現像、ベタ焼き、プリントと段階と過程を経てきたということがあるからなのだが、撮影から現在に至るまでの自身の時間、経験といったものまで引き連れて、内包しているような感じさえする。

写真とは、まったく奥底計り知れないものだと思う。



2019/06/17

ネパールへの旅—カトマンドゥ 1―


ネパールの首都カトマンドゥは、東西南北数キロ四方に広がり約51k㎡、ふたつの河が貫通する。
5山に囲まれた盆地は、標高1,400メートルにもなる。

カトマンドゥでのひとりの日々が始まり、
この都市はどんなものなのだろうという興味と同時に、
ここに暮らすひとびとの素の暮らしが見たいと思った。

そして足は自然と観光地以外のリングロード(市を隔てる環状道路)へと向いていった。