2018/11/05

何でもない・ぼんやりとした


何年か前、オーダーメイドの鞄をつくる職人さんの話を聞いた。

それは、注文を受けてから納品は一年掛かるということ。

そのあいだ、職人はそのひとのことを考え、素材を選び、デザインをし、手作業で制作をする。

まさに世界にひとつの、作品のような鞄だ。

代金のことはよく分からないが、何て贅沢なことなのだろう、と思った。

しかしわたしの胸に響いたのは、出来上がった鞄そのものに対してではなく
職人さんが留めていた時間のことだった。

その、ずっと考えている―という状態は、何かが降りてくるのを焦らずに、ふさわしい時期が来るのを待っている・・・・・とてつもなく豊かな時間だ。

わたしもそんな仕事がしたい、と心底願うのだ。