今回の私の旅の大きな目的の一つ、キューバの首都、ハバナのカーサ デ アジア(アジアの館)での「ENTRE FRONTERAS」の展示が始まる。
日本写真協会賞・新人賞受賞作品の世界巡回展は、初めて
ハバナでの*展示が実現した。
*企画、主催:日本写真協会・カーサ デ アジア
後援:在キューバ日本大使館
この展示は、2013-2015までの3年間の日本写真協会賞・新人賞受賞作家(各年2名・計6名)の作品を世界の都市で巡回する企画である。
日本の写真を通して写真文化の理解と発展を目的としており、特に日本の写真の認知度がそれ程高くない国や都市で行っている。
現在モスクワの、ロシア国立東洋美術館でも同じ展示が行われている。
今日はカーサ デ アジアで「ENTER FRONTERAS」の開会式があった。
カーサ デ アジアの館長で、今回の展示のディレクターであるテレシータ・エルナンデスさんと、在キューバ日本大使館の伊藤ヒカルさんの挨拶があり、それぞれスペイン語、日本語に通訳される。
開会式には、ハバナの写真家や写真が好きな方はもちろん、日本に興味のあるハバナ市民の皆さんが60名も来てくださった。
私はキューバ国営テレビ局のインタビューを受けたり、ハバナの写真家や地元の方々とお話しでき(スペイン語の通訳は日本大使館の方が引き受けて下さる)心に刻まれる忘れられない時間となった。
◆展示作品について
西野壮平さんのジオラマの作品(チラシ右上)は、ハバナと東京の2作品で、これは誰が見てもとても楽しい。
また、清水哲朗さん(チラシ左上)と石川竜一さん(チラシ右下)の作品は、個人的な思いを写真にこめているにも関わらず普遍的で、キューバの人々の心に直に訴えてくるように(私には)思え、ここでも私は写真の持つ力を改めて感じたのであった。
特に石川竜一さんの作品は沖縄を舞台にしているからだろうか・・・沖縄とハバナの風土の共通点も手伝ってか、この地にすっかり溶け込んでいるように思える。
斎藤陽道さん(チラシ中央右)と中井靖也さん(チラシ中央左)の作品は、ふたりの作品の質は全く異なるのだが、共通して日本独特の要素が際立っていた。
斎藤さんの写真は、日本を包む虚無感というベールや、今の時代の空気感を表していると私には思え、それは、キューバの社会とは一線を画している。
中井靖也さんの撮る「鉄道写真」というジャンルは日本固有のもので、鉄道が発達していないキューバでは、たいへん珍しい、異国情緒のある写真になっている。
日本で見ると何も気にならなかった視点が、キューバで展示を観ることでこのように浮き上がってくる事実は、とても面白いと思った。
(モスクワではまた違った見え方がするのだろう)
私の作品(世界の10都市の比較都市論としての作品)は、
ハバナ市民の方々の頭にすんなりと入ってくれたようだ。
日本ではコンセプチュアルで複雑な作品のように捉えられることが多いが、実は至ってシンプルなメッセージの作品である。
それがキューバの人に伝わったことは嬉しかった。
―
同じ写真でも、環境によってその見え方が変わること、
キューバと日本での写真の見え方の違い・・・これはとても不思議なことだ。
そう、写真とは生きものである。
テレシータ・エルナンデスさんと伊藤ヒカルさん |