2019/02/16

ネパールへの旅


~上田達さんの写真集『紫の空』から
 マイディ村へ~

マイディ村へ到着したのはもう夕暮れだった。
旅に同行してくださったふたりと、急いでホームスティできる家を探す。
歩くこと15分余り、沈みかけた太陽が、その最後の光を照らし、道や家々の壁を紅く染めていた。
上田達さんの撮った夕暮れのマイディ村の色、そのものだと思った。

ホームスティを受け入れている家に到着すると
お母さんの笑顔が温かく迎え入れてくれる。
日も暮れかかっていて「今日泊まる宿は見つかるのだろうか、」というわたしたちの必死な心情と裏腹に、お母さんは涼しい顔で中庭で働いている。
その日丸1日、殻のついたマスタードをビニールシートいっぱいに広げ乾燥させていたものを、引き上げているところだった。
この家は親子3世代が住んでいて、息子さんがクリニックと薬局を開業し、ホームスティの客も受け入れているようだ。
その息子さんの娘で、10歳くらいの女の子が、妹である赤ちゃんをいつも抱っこしてる。
つまみを作ってもらいビールを飲みながら色々話してるそのうちに、ダルバート(ネパールの定食)の夕飯が出てくる。
わたしたちはキッチンのテーブルで、家族や他の宿泊客は中庭のテーブルで食べているのだろうか、お母さんがひっきりなしにダルバートを皆に運んでいる。
食事が終わり、わたしたちはまだビールを飲んでいるところへ、息子さんとその奥さんが歯を磨きながらキッチンにやってきた。
上田達さんが2010年にこの村のバッドリさんという人の家に2泊ファームスティしたという旅行社の日程表を手掛かりに、バッドリさん宅を捜している旨を同行のネパール人ジャーナリストが尋ねる。息子さんはその家を知っている様子で、明日8時に案内してくれることになった。
わたしたち3人のテーブルには、そのうちにお母さんと女の子も加わり、日本の話やネパールの話に花が咲く。
女の子が、わたしたちが日本語の歌を歌った後、かなり恥ずかしがりながらも、ネパールの歌を歌ってくれた。
そのリズムは異国情緒に溢れ、声は僅かにハスキーで、凛としていて、本当に可愛らしいと思った。