2019/09/02

写真のこと、そして日々。(3)


そのひとつの話として、何年も、何軒もの家を直してきたアーティスト夫婦の友人がいる。
フランスでの話なので、あちらは新築の家の方が少なく、家は直して使うものだし、地震もないから、耐震とかそういうことはあまり考えなくて良い。だから日本とは条件も環境もまるで違う。

それでも、自分たちのパリのアトリエを何年もかけて改装し、田舎に買った家を改装し、別の地方都市に買った小さな家も、住みながら改装し、遂に見つけた理想の場所に立つ家とアトリエを含む大きな家を改装し、現在はそこに住んでいる。

丁寧に生きること、暮らすこと。
改装を早く終わらせなくちゃ、と、焦ったり慌てたり決してしない。
夫婦は画家と彫刻家なのでお互いに拘りが強く、白い壁にフックをつけるかつけないかで、何日も意見を主張し合う。

防寒のため、床下に羊の毛をフワフワに解したものを入れた話や、(建築の工法として、とても贅沢なことらしい)
売るために改装した家なのに愛着が湧いて、それを躊躇しているという話もいつか聞いた。
一軒の小さな家や小屋を買い取って、早くても2,3年。
長ければ数年、工期が終わるまでに年月を要したのではないだろうか・・・。

性格的に、わたしはそんなに気長にはできない。
それでも、彼らのやり方や、生きることへのエッセンスがずっと深くまで自分の中に浸透してきていることに、同じような局面に立つ今、感じているのだから、不思議なことなのだ。



                                                                                                     Osaka,2018