2019/07/23

ネパールを旅して


ネパールから戻って今日でちょうど5ヵ月となって、そのことに気づき少しはっとした。
ネパールでの体験は確実にわたしの生活や価値観にまで入り込んで影響を与えていると、実感としてわかっているからだ。

ひとびとの暮らしの質素さ、自然に逆らわずに生きること、そして運命を受け入れることー
水は山から引き、燃料を燃やして灯りを取る。煮炊きのための火は薪でおこすなど、それを不便と感じていない、そして昔から延々と続く生活を見た。

そして写真ー
今回の旅ほど、写真の大切さを、その持つ意味の深さを思ったことはない。

写真を媒介に置くことで、ひとに、場所に、わたしが関わること、関係するための丸太のような一本の棒を渡してもらったような感じである。

しかし今は、まだそれだけの状態である。

写真の展示や発表も良いことだが、この仕事がどんなものだったのか心底わかるまでには何年も掛かるのだろうということを、ここ最近わたしはようやく知ることになる。
それはー解き明かすことではなく、大きな精神の宇宙空間に、自ら身を投じさらに掻き分け入り込み、作品観を広げていくことなのだと・・・。
そして精神の草むらで別の横道や庭を作ってしまっても良い、休憩しても良い、いくら時間を費やすのも自由だ。

そこで見えた景色をぼんやりと受け止められたとき、はじめてあるひとつの作品としておぼろげながら輪郭を滲ませてくるのではないかと。
このところずっと思い、考えている*ある写真家の写真のことと、自身のネパールの写真とを錯綜させながら、写真の迷宮のことを考えている。

                                                                                                                 *ある写真家ー鈴木清氏