雪の日の思い出
雪の日の思い出
雪の日の鮮明な思い出はもう30年も前に遡る。
10才前後かそれより前の記憶が、なぜかいちばん鮮明だ。
朝、野沢菜を取ってくるよう言われ、野沢菜の漬けてある家の外の桶に行くために
勝手口の木のドアを開ける。
そこには、ピンと張りつめた冷気とともに、ほわんとした圧倒的な白い世界が広がっている。
あまりに積雪が多いと、これから仕事に出かける両親の少し慌てた雰囲気が伝わり
子ども心には、何かが起きそうな予感で、少しワクワクしたものだ。
実家の隣はリンゴ畑だった。
斜面に作られた小さな畑は我が家とは何の仕切りもなく、まるで庭のように気軽に踏み込めた。
物心がつく年ごろまでは、リンゴ畑に入っては、よく遊んだ。
雪の積もったリンゴ畑は、子供にとっては恰好の遊び場に変わる。
リンゴの木と木の間に作ったコースでソリ遊びをして何度も何度も滑る。
斜面の角度もコースの長さも丁度良かったし、何より家まで30秒もあれば帰れるというのが
ポイントだった。
あんな楽しい遊びは他にはなかったかもしれない。
今でも子供のころの楽しかった記憶として、しなやかによみがえってくる。