旅は準備している段階が私は一番楽しい。
その国や街を舞台にした小説を読んだり
できれば映画を捜してDVDを観たり・・・。
詳細な観光情報よりも、小説や映画の方がより良いと思う。
そして土地や場所に対する無限の想像力が
現地に着くまでの数週間のあいだ
頭の中を自由自在に駆け巡るのだ。
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-都市との対話- 「フランスの風」より |
「この国、この都市は一体何なんだろう?」という疑問を
2004年に初めてパリに住んだ時から・・・
今でもずっと私は抱き続けている。
未だフランスやパリの写真を撮っているのは
それを知りたいから・・・という好奇心以外に他ならない。
思い通りに物事が進むことはまずない・・・事や
どうしても理解できない彼らの思考回路に辟易しても
この国、街、人々の大らかな魅力を一旦知ってしまうと
興味が絶たれることはない。
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-都市との対話- 「フランスの風」より |
Domaine(ドメーヌ)とは
畑を所有し、葡萄栽培から醸造などワイン製造を一貫して行う生産者を差す言葉だ。 (本来はフランス・ブルゴーニュ地方で使われる称号)
最近、長野県の葡萄栽培やワイン作りの面白い本に出会い
その製法やプロセスに大きく興味を奪われている。
(玉村豊男著:『千曲川ワインバレー』など他多数)
そして私がやるなら絶対ドメーヌだ、と思ってしまった。
写真なら撮影、フィルム現像、プリントまですべて自分でやる事と
ちょうど同じことが言えると思う。
全ての行程が作者の意図したところに落ち着き
且つ連携が取れたら、これほど説得力のある作品は無いと思う。
ワインも写真も・・・。
私の現在の写真作りは、全行程を自分で行ってはいるが
まだちぐはぐな部分が多々ある。
行きつくところは
良くできたドメーヌワインのような・・・
そんな作品を目指している。
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-都市との対話- 「フランスの風」より |
私は写真を撮ることに限って言えばパリの右岸が好きだ。
住むのにはのんびりした治安の良い歴史的な地区の左岸が断然良いのだが
こと、撮影となると話が変わってくる。
都市のダイナミズム、コントラスト、動き、どれをとっても右岸の方が圧倒している。
「よそ者は足を踏み入れないほうが良い」エリアが
パリには幾つかあるが
それらは右岸に集中しているのも頷ける。
*セーヌ川を挟んで北が右岸、南が左岸
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-都市との対話- 「フランスの風」 |
昨年3月、パリでの撮影の後半
人を撮りたいという強い気持ちが芽生えてきた。
ノーファインダーでも何でもとにかく人を撮ってみよう・・・と。
ストリートスナップは人物が入る途端に生き生きと輝きだす。
そして撮っているとき、現像、プリントのときも
心拍数は通常の倍位?と思える程どきどきする。
反面、人物が入っていないスナップの方が
より都市の悲哀、深い闇の部分など如実に映し出している時がある。
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-都市との対話- 「フランスの風」 |
約1年前に再撮のために訪れたパリでの写真を
今頃、プリントして整理しているのだが
ベタ焼きを見ていると撮った瞬間と、その前後の情景が
まざまざと甦ってくる。
面白いのは、私の精神状態(フラットな時、前のめりな時
アンニュイな時など)が、かなりはっきりと思い出され
また、それが写真の絵柄と連動している点だ。
写真を撮るときの記憶は、どのようにして脳に溜めこまれるものだろうか・・・とふと思った。
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‐都市との対話- 「フランスの風」より |
「海外に撮影に行きます」と連絡があった。
私の心はピクッと反応をする。
「数ヵ月新たな場所に住んで作品を撮ります」
「フィルムカメラを始めました」
何ていう話を聞いても同様だ。
“写真活動の個人的な挑戦”は周りにどんどん伝播していくもので、それは写真の持つ特徴であると思う。
こんな部分をみても、写真には大きな可能性が秘められていると
私は感じるのだ。
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‐都市との対話‐ 「フランスの風」より |
2016年も2月に入りました。
ひと月遅れの新年のステートメントになります。
2013,2015と撮影したフランスでの写真を
今年は発表したいと思っております。
同様に羽田、北海道の写真の撮影も続けていく所存です。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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-都市との対話- 「フランスの風」より |