長野 1
ある人が長野のことを「湖の底に沈んだような街」と
文章に書いていたことがある。
読んだ当時はピンとこなかったが
長野を離れ東京で20年以上も暮らしていると
その意味するところが良く理解できるようになってきた。
その人も私も長野市出身だが
静かで、変化がなくて、
新しいものが入ってきても弾き返されてしまうような土地・・・
というイメージは共通しているようだ。
そのことは若い時分、恐怖にさえ感じた。
では今はどうだろうか。
ここに来て、故郷について様々な角度から考えてみる
機会がおとずれたようだ。

世界をどう捉えるか?
というのが写真家の使命だとしたら
その〝世界″と向き合うだけの自分というものが
なくてはならない。
では〝自分″をつくるにはどうしたら良いか・・・。
できるだけ感性を刺激するような新しい経験、
色々な経験をしたほうが良いのは言うまでもない。
そして写真以外の事をたくさんしなくてはならない。
故に私は旅に出るのだろう。
旅が目的か、
写真が目的の旅か・・・
その両方のようにも思う。
―縁の色― 森田城士 写真展
4×5の良い写真を久しぶりに観た。
森田城士さんは大学の後輩にあたるが面識はなかった。
4×5・ネガフィルムによるカラープリントは、限りなく続くと思えるような深く、やわらかなグラデーションによってあらわされ
4×5の受容力の大きさとその可能性に改めてはっとした。
この写真展‘縁の色”(ふちのいろ)はカラー作品で自作のプリントだが、森田さんが今年初めに出した写真集『Kosmos』は
4×5モノクロームで、これはとてもユニークな写真集だ。
判計はパノラマサイズと言ってよいのだろうか。
実はこれ、横位置の4×5のプリントをヨコに切ったサイズだ。
通常通り撮影しプリントしたのち、1/3のサイズに切ってトリミングしたものを完成形にしている。
写真の内容は、東京、千葉、ソウル、香港、台北、N.Y、バルセロナそして森田さんが生まれ育ったメキシコシティーなど、都市を俯瞰撮影したシリーズだ。
これらの都市のオフィス街、集合住宅、工事現場や高速道路など、野暮ったくなりがちな被写体を横長で見せることで、都市のエネルギーというものに再び注意が向けられるような作品に仕上がっている。
都市写真は往々にして、情報量が多すぎることがある。
目がいくポイントは1,2ヵ所で十分なのかもしれない。
それをうまくクローズアップしたかのように整理して見せると
思いもよらない新鮮さや、場所への親しみが生まれると、この写真集を観て思った。
しかし4×5を縦で撮影し、タテに切ったバージョンもあり、
今年初めにニコンサロン銀座で個展をしたと聞いて
二度びっくりした。
森田城士写真集
『Kosmos』
蒼穹舎
2014年1月発行