ネパールへの旅―マイディ村 7―
そのあとのことは夢の中の出来事のような、幻想的な時間だった。
ビカスさんは、バッドリさんのお父さんからずっと話を聞いている。
その姿はジャーナリストが村の長老から話を聞くというよりも、友人のおじいちゃんから話を聞いている姿のようであった。
その横で、お母さんはチヤを出してくれたり、ダルバート(ネパール風定食)の準備のためにすぐ下の畑で青菜を収穫し、それを山から引いてきた水で洗い、料理に取りかかっている。
「わさび菜かな?」と言いながらその様子を興味深くわたしたちは見つめた。
よく整えられ、きれいに掃除された土の上にゴザを敷いてくれ、その上でわたしたちはダルバートをいただいた。
途中、放し飼いにしている子ヤギがダルバートの匂いにつられわたしのところにやってきた。
その子の首を持って、向こうの方へ追いやる姿だけが唯一
毅然としたふたりの態度だったのだが、あとは、そっとやわらかい仕草と穏やかな表情がとても印象的で、いまでもずっとこころに残っている。