ネパールへの旅—カトマンドゥ 4—
タメルでの日々は、撮影と食事のことを考えれば良いだけの(慣れてしまえば)至ってシンプルな生活だったが、最初はまったくそうはいかなかった。
タメル地区の中の道は、陥没、段差は当たり前で、ぼんやり歩いてはいられない。
車やバイクや人力車はスピードを緩めないし、予想できない凹凸や段差、そして突如現れる水たまりは、都市の中にあってさまざまな障害物を超え、バランスをとって歩かなくてはならない。
トレッキングをしているような、或いはトレイルランの練習のような、そんな不思議な感覚さえ与えてくれた。
東京のように、滑らかに舗装された歩道をぼんやり歩いている毎日からすると、注意と緊張感を途切れさせず、予想以上に骨盤や足を使って歩く街、というのが今とても懐かしく思える。
このように歩いた体験は、恐らくわたしのネパールでの日々の記憶のことと深く関わってきているのだろうと、写真を観ながらそんな風に感じるのだった。