2018/11/26

大阪は水路の街

大阪市の市街地西側はかつて海だったことから、海や川や水辺を思わせる地名が多い。
わたしが歩いた地域や場所に限っても
 阿波座、立売堀、西長堀、難波、剣橋、汐見橋、南堀江、北津守、桜川、心斎橋、道頓堀、土佐堀、鰻谷、天満橋、あみだ池、どふ池ストリートなど。
ユニークで好奇心を刺激するような名前が連なる。
そして橋の名前がつく駅が非常に多いことに気がつく。

幅の狭い川を都市計画のために完全に埋め立ててしまっていない大阪では、街の中心部にも川が流れ、橋が架かる。

市街地中心部の北側は、大川(旧淀川)から流れ込んだ川が中之島によって二手に別れ、堂島川、土佐堀川となる。
やがてひとつに合流した川はすぐに別方向へと行く先を変え、安治川、木津川へと名前を変える。
そこでの合流地点は、まるで水上のジャンクションといったところ、壮観である。

中之島の両岸は川岸に風景を楽しむための街並みが、少しパリのセーヌ川を思わせる。

橋を渡るためにゆるいアップダウンが絶えず出現し、風景が開けていく大阪市の街は、都市の余白といえるような空間がちりばめられている。
橋によって作られる空間ー橋の上や下、階段や川沿いの細い路や坂道など、たくさんの仕掛けがひとびとに働きかけている、そんな風にこの町をわたしは理解した。

小池昌代の『幼年、水の町』を読んだ。
江戸、深川で育った筆者が、そこの水辺の風景と幼年期を重ね合わせるように書いている。
水のようにさらさらと書かれたこの人の文を読み、江東区にわたしが住んでいた頃を思い出す。
親水公園や小名木川、荒川土手に西大島のクローバー橋と、思いでの舞台は事欠かない。

大阪は、東京よりも街路樹や植栽があまり多くない。
けれど、水路が街の縦横に走っている、それが大阪の人にとって親しむべき自然なのかも知れないな、と思った。