小島剛一さんについにお会いすることができた。
都内で行われた小島さんの講演会に、幸運にも参加することができたのだ。
小島さんはフランス、ストラスブールで長年教鞭をとりながら、
40年近くトルコ共和国内での少数民族とその言語の臨地調査に出向き
調査、執筆等行ってきた。
私が『トルコのもう一つの顔』の本に出会ったのは2010年、私がTOPOPHILIAの
7カ国目の撮影地に選んだのがイスタンブールだったため、叔母がその滞在の前に
プレゼントしてくれたのだ。
この本の中で私が最も心を惹かれたのは、全篇を貫く、
小島さんの研究に対するひたむきさだ。
フランスの大学で教鞭をとる傍ら、1年に5か月近くある大学の休みにトルコの少数民族の人々の住む町や村に赴き、現地調査をする。
フランスにいる間は、少数民族の言語の習得に持てる時間のすべてを充てた。
また本の一節で「一銭の金にもならない事を、多くの時間、費用、労力、知力を
尽くす人間は、初めて見た」とトルコで言われたとあり、
何だか私自身をダブらせてしまった。
小島さんが、トルコ国内の少数民族の研究と言語の解明という、一つのテーマに情熱を注ぐ生き様は素晴らしいと思う。
そして小島さんの著書は、私が写真作品「TOPOPHILIA」を完成させる大きな支えとなっていた。
私のイスタンブール滞在から3年が経ち、小島さんにこんなに早くお会いすることができるとは、夢にも思わなかった。
講演の中、氏の静かで淀みなく流れるように出てくる言葉はフランス語のリズムのようであり、また「音楽の言葉」のようにも聞こえた。