―VITRE(ヴィトレ)へ― /フランス/2013・初冬
VITREはフランス北西部、ブルターニュ地方の玄関口に位置し、お城のある小さな古い町だ。
友人で、彫刻家の家族を訪ねて行った。
彼女には2004年、パリに暮らしていたとき随分お世話になった。
一目ぼれして購入したという可愛らしい石造りの家に、画家の旦那さんと小さな娘さんと3人で暮らしている。
私が住んだのは、彼らの所有する貸家で、彼らの家から歩いて10分ほどの小さな三階建の、こちらも古い石造りの小さな家。 1階がバスルームとダイニングキッチン、2階が広々としたリビング、3階がベッドルームになっていて一人で使うには贅沢すぎる広さだ。
古いラジオから流れるローカル放送を聞きながらビールを飲み、VITREの地図を見ながら、明日はどこに撮影に行こうかとしばし考える。
ここは本当に静かで安全な町だ。
夏はヴァカンス客で賑わいを見せるそうだが、11月下旬の今はほとんどいない。
日没後ふと三脚を立てて写真を撮ってみたくなる。近所の石造りの街角を長時間露光で撮影してみた。
古いお城を囲む小さな石造りの旧市街、その周りには現代的なフランスの住宅街、その更に周りには広大な牧草地や畑が広がっている。
友人にもらった地図を頼りに「森の中の散歩道」と名付けられた道を、できるだけ遠くへ行ってみようと思った。子供の頃に戻ったように、田舎の道をひたすら歩く。
木々の間の美しい1本道で立ち止まり深呼吸する。
そして時間が本当にゆったりと流れる様子を心底かみしめた。